零章

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―――深夜 町のほぼ真ん中に位置する古風な屋敷、その屋敷内では凄惨な光景が広がっていた。 本来なら宴会をする場であろう広々とした居間には酒も杯も無く、ただ元はヒトであったモノと血の海が広がっており、その全てが一刀の元に斬り伏せられていた。 その数、十人。 その中心に血塗れの刀を持った一人の少年が立っていた。 その姿よりもたらされる印象は優男。女性とも取れそうな顔立ち、絹のような腰まで伸びた髪。服装はGパンに上は軽く着崩したYシャツ。その上に女性用の着物を羽織っている。 彼は少しの間、明後日の方角を見ていたが、ふと思い出したように手に持つ刀を見る。 刀身の中程に刃こぼれがあり、刀身が軽く曲がって歪んでいた。 中々良い刀だ。と、彼は思う。 十人も斬ったと言うのにこの程度の破損で済むとは彼自身思っても見なかった。 此ならば、また研ぎ直せば以前の切れ味を見せてくれるだろう。
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