一章

3/13
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
彼の部屋は実に質素だ。 簡易的な折畳み式のベット。そして部屋の真ん中にあるソファー。ただそれだけである。 テレビなどない。それどころか冷蔵庫すらない始末だ。 部屋の中は電灯が点いており、ソファーには一人の女性が雑誌を読みながら陣取る様に横に寝ていた。 「お帰り。翔(カケル)」 そう言って寝転んだ体勢でタオルを投げてくる女性。 「ああ、ただいま。燈華(トウカ)」 お互いに事務的な態度で挨拶する。 「翔、早く風呂に入ってこい。そんなずぶ濡れで部屋の中を歩くな」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!