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なちるの報告に、思わず息を呑む。しかし大声を出すことはない。大声を出せばみんなに聞こえてしまうし、せっかくなちるが内緒で言ってくれるのが台なしになってしまう。
「どんな人?」
「えっとね…3年生の先輩で天城院先輩っているでしょ?あの人なの」
「…天城院――天城院椿?」
その人物は良く知っている。全学年成績発表でよく見る一つ上の先輩の学年の成績表で目にしていた名前だったからだ。
「(でも確かあの人…)」
「今日一緒に帰りましょうってメールしたんだけど、帰ってこなくて…なんか、部活とか生徒会の仕事で忙しいみたいなんだ」
「なちる意外じゃん。紳士的な人が好みだと思ってたけど」
なちるが清楚な子だからと相手もレディに対する嗜みの強い人物ではないかと印象を抱いていたが、誰が誰を愛するかは自由だ。別に何も口だしはしない。
「じゃ、あたしはケン達とゲーセン寄って帰るから、なちるは先輩と帰りなね♪」
――恋愛なんて…あたしにはまだまだわからない。ただ彼氏が出来れば、こうやって友達同士の付き合いが悪くなる。…んだと思うよ。
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