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「褒めてるんだ。むしろ、これはある一種の才能だぞ」
なんだか嬉しそうなんだが、無表情で淡々と語られるとバカにされている気がしてくる。
そう思いながらオレは之人を見る。整った中性的な顔立ちと、無精で伸ばしている髪が男子なのか女子なのかよくわからなくしている。
「どうした?」
「いや、オレから言わせてもらえば、お前の方が主人公っぽいぞ。モテそうだし」
「それはない」
「嫌味か?」
確かに之人が告白されている所なんて見たことないんだが……なんにせよ、コイツは自分を過小評価しているところがあるからな。
「嫌味なんかじゃないさ、俺は本当にモテないんだ。何故なら才能がないからさ」
「何の?」
「主人公のだ」
一度脳外科か神経科に連れてくべくか? それとも精神病院か? ……いや、しかし、コイツが可笑しいのは今に始まったことじゃないし……あぁ、そうか、なるほど、出会った頃から可笑しかったのか。
オレが一人で納得していると、之人が白い目を向けてきているのに気付いた。
「言っておくが、俺は正常だ。脳に障害もないし、精神的な疾患もない。危険な電波を受信できたりもしない。ごくごく普通の一般庶民だ」
オレはお前を普通だと思ったことは一度たりともないんだけどなぁ……。というと、また面倒な事になるので言わない。オレは大人だからね。
「で? オレは主人公としてなにをするべきなんだ?」
「何も」
は?
「何もって……」
「主人公自らトラブルを起こすようなギャルゲーはほとんどない」
あ、ギャルゲーに限定された……。
「つまり、襲ってくるトラブルに巻き込まれるのが主人公としてのお前の仕事だ」
「……嫌すぎる」
オレは何事も自分から行動したい派なんだが……。抗議しようと口を開きかけたところで之人が立ち上がった。
「何だよ?」
「時間だ。今からバイトなんでな、じゃあな」
あっさりと立ち去る之人に掛ける言葉は間に合わず、完全に逃がしてしまった……。
明日学校で覚えてろよ……!
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