662人が本棚に入れています
本棚に追加
なんと火を吹いていたのは自分ではなく、尾崎大尉の紫電改であった。
俺は自分の目を疑いつつ、急いで尾崎大尉の機へ駆ける。
状況的にみれば、恐らく尾崎大尉は俺の身代わりになって、機銃弾を受けたのだろう。
「尾崎大尉!」
俺は涙声になっていた。
「俺は大丈夫だ。
空戦に戻れ」
「しかし…」
俺にはそんなこと出来るはずがない。
「いいか、俺がお前を助けたのは、お前の将来に期待しているからだ。
きっとお前は俺以上の搭乗員になれる。
それにお前はまだ若い、死ぬのには早過ぎる」
「う……ぅぅ」
涙が止まらない。
「これは俺が勝手にしたことだ。
だからお前が悔いることはない。
頼んだぞ……香月」
そう言い終わると紫電改の高度が更に下がった。
「尾崎大尉!」
落下する紫電改の風防越しに尾崎大尉の顔が見える。
「……笑ってる…?」
俺には微笑んでいる尾崎大尉の顔が見えた。
そして、次の瞬間……
紫電改は爆散した………。
最初のコメントを投稿しよう!