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【Cooking】
「お前の手は器用だな」
興味深そうに細められた緑色の双眸を向けられて、落ち着かない気分になるのは私だけなのでしょうか。
「そんな事はないですよ…アーサーさんも、その…悪くは、ないです」
「あー…世辞はいいって。で、こっからどうすればいいんだ?」
「それは…ちょっと失礼しますね」
身を乗り出すようにして横に立つ彼の左手に自分のそれを重ね、右手も同じように重ねて
「き、菊…」
戸惑いがちに呼ばれた声に顔を上げ。
明らかに不器用な手つきでいびつに剥かれていくじゃがいもを見れば、曖昧に濁した私の言葉は不快に聞こえたかもしれない。
「すいません、私の言葉が気に障ったのなら謝罪します。決してアーサーさんの料理が下手だと言ったわけでは…」
「バカッ…違うっ!その、だな…料理が下手なのはわざとだ!」
本当に…
ツンデレって実在するのですね。
「わざと…なんですか?」
「そうだ!下手だって言えばお前に…こうやって教えて貰えるだろ」
真っ赤になりながらゴニョゴニョと告げられた言葉に、此方まで照れくさくなって頬が赤くなるのが分かる。
何気なく重ねた手のひらまで熱くなっていくようで。
「…萌えました」
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