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【A HAPPY NEW YEAR!】
除夜の鐘が響く。
キンと冷えた空気の中で、初詣に向かう人達で参道は賑わっていた。
あと数分で今年も終わる。
「寒いですか?」
「い、いや、大丈夫だ」
アーサーさん、鼻先が少し赤いです
白い吐息が微かに震えているのが見えて、黒い手袋に包まれた手を掴むと人の波から横道へ逸れる。
「日本の冬は底冷えするのですよ、やっぱり帰りましょう」
お国違えば寒さの質も違うもので、たぶんアーサーさんにはツラいはず。
「でも、日本じゃトシコシにハツモウデするものだろう?平気だ、戻ろうぜ」
「駄目です!」
大事な方に風邪など引かせたくはない、という想いで強く押し留める。
「いいんです!そんな決まりはありませんし…初詣ならお昼に参りましょう?」
「菊」
「私は貴方と一緒に年が越せればそれだけで満足なんです」
ギュッと抱きついた先の、スーツの胸は冷たくて。抱き返してくれた腕も冷たくて、冷えきっている。
わぁっ…!と歓声めいた声が遠く、聞こえてくる。
どうやら零時になってしまったらしい。
「あ、あの、こんな体勢ですけど、あけましておめでとうございます」
見上げた先にある緑色の双眸が優しく細められる。
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