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ドスンと鈍い鉄の塊がツグミの額に突き刺さると同時に、痛みを感じる間もなく玄関の中へ引っ張りこまれたのだ
「…っつ……」
ミニスカートのすぐ下の膝からうっすら血がにじんでいるのがわかると
ツグミはさっきまでの恐怖とは逆に怒りが込み上げてきたのだ
「…いきなり何すんのよ!!
ひとの家に勝手に上がりこんで怒鳴って怪我させて!!
そっちこそ何様のつも…」
パチンっ…
ツグミのけんまくは一度の平手打ちであっさり遮られ…
「悪いのはおまえだろ!!
遅くなるなら連絡ぐらいしろよ…!どうせいい男見つけてちやほやされて楽しんできたんだろ!!!
知らないとでも思ってたのか……!!」
確かに若い女子大生が夜中1時近くまでふらついているのは健全とは言えないが…
父親でもないマコトに言われた事実に腹立たしさを覚えたツグミは
再び反論にでた
「だいたい自分のゼミの集まりで出掛けただけで…
部外者のマコトにとやかく言われる筋合いないじゃん
合コン行ってるわけじゃないし…!!
考えたらなんで勝手にひとの部屋にいるの??
合い鍵だって渡してないし……
いくら彼氏彼女関係だってやっていいことと悪いことあるんだよ!!
鍵返してよ!!
もう帰ってよ!!」
小刻みに肩を揺らすツグミと黙ったままのマコトだったが
しばらく静寂を取り戻した真夜中の一室に…
再び…ドスンとツグミを押し退けて玄関を出ていく扉の音があまりにも虚しい響きだった
数秒後…チャリン…と玄関のポストに寒々しい乾いた音がまた響く
「帰っちゃった…」
さすがに感情の糸がプツリと切れたせいかツグミの目には大粒の雫が今にもぽたりと落ちそうになっていた
別にマコトと喧嘩したくて別れたくてこんな真夜中にいい争いするつもりじゃなかったのだから
この日…ツグミは一睡もせず…ただ夜中起きた現実に向き合うのが精一杯でカーテンの隙間から朝日が昇るのをぼーっと眺めていることしかできなかった
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