Chapter 1

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あ、私は八重 雪。 夜桜家の執事です。 そして、先ほど出て行かれたのが夜桜夫妻の1人息子、 夜桜 風斗(よざくら かざと)様。 夜桜家は日本では知らないものはいないほどの大富豪で、その富は一生遊んでも使い切れないほどだと噂されている。 そんな大富豪がある日突然執事を雇うという求人票を公開した。 募集人数は1名。 その内容は息子の世話兼遊び相手。 給料は破格も破格、1発大逆転が狙えるほどの金額だったから、応募者数は瞬く間に100人を超えたという。 当時貧乏だった八重家もこの求人票を偶然見かけ、当時の私はまだ中学生なのに、両親から応募してほしいと懇願され、ダメもとで面接を受けたのだ。 もやしと言われる細さ、もともと色白で、引っ込み思案な性格も災いして根暗と呼ばれていた私。 会場にはベテランの雰囲気を漂わせる50代前後の女性、体格のいいどんな敵でも殴り倒せそうな男性など、強者ぞろいで圧倒されたのを覚えている。 そして、私の番。 こんこんと、震える手でノックをして入る。 その時の面接にいたのが、夜桜夫妻と、SP、そして、 「お前がいい!」 そう私の顔を見た瞬間、びしっと指をさして即決した当時5歳の風斗様だった。 今でも風斗様はなぜ私をお選びになったのかわからない。 しかも、5年契約だったところ、彼がぐずって延長に延長を重ね、ついには専属にまでしてくれたという話も聞いた。 そして現在。 風斗様は今どきの高校生という感じで、髪を染め、前髪が目にかかるくらい伸びている高身長の少年です。 髪を切ったほうが…というのだが、「ださいじゃん」の一言で終了。 今年受験だといっても、「どうにでもなるだろ」しか言わず、聞く耳を持とうとしない。 そう、私の言葉なんてほとんど効力を持たないのだ。 私が執事になったのは、確か13年前でしたか。風斗様が5歳の頃。 あの頃は本当に可愛いお方だった。 お目目はくりくりで、何かあるごとにヒーローごっこや、お菓子を作ってあげたりして…。 嬉しそうにぎゅーっと抱き着いて「八重好き〜」ってにこにこ言ってくれたっけ。 あぁ…かわいかったなぁ…。 なのに、最近は親の反対を押し切って私同行の1人暮らし(それって一人暮らしか?)するわ、 昨晩だって数学を教えているにも関わらずマンガを読み漁って結局何も聞いてないわ…。 それを片付け終わったのが遅くて私は寝坊して…。 ふわぁ〜と大きなあくびをしてしまう。
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