Chapter 1

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「…私は風斗様に甘いのでしょうか」 小さくため息。 ベッドから出ると身なりを整えて鏡の前に立つ。 そして引き出しから一冊の本を取り出した。 これは知り合いから貰った小説。 内容は、ご主人と執事のよくあるようなBL物語。 BLなんて…と思ったけれど… でも、すごく憧れた。 表紙の2人を脳内で無意識のうちに私と風斗様に置き換えていた。 そう、私は、ご主人様に恋をしている…。 「いつからでしょうか…。風斗様に愛されたいと願ってしまったのは」 ぱらぱらとめくる。 何回読み返しただろう。 もう、お話は覚えてしまった。 セリフを一字一句間違えることもない。 この執事のように、私も風斗様を抱いて想いを伝えたい。 私をずっと求めるようにしたい。 …でも勇気がない。 こんな失敗ばかりで抜けている執事を、風斗様が好きになるはずがない。 現に、ここずっと風斗様は私に冷たい。 もしかしていつかは解雇なんて言われたりして。 自分で考えておいて、ぞっとする。 「…掃除しますか」
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