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アイゼンシュバルツ帝国騎士団、第二十五番隊は、帝都グラジオールから南西に半日歩いた場所にあるナムド山の麓に来ていた。
「隊長さん。ここに討伐予定のエト・アリさんがいらっしゃるのですか?」
二十五番隊で唯一の女性隊員が、一番先頭を歩いて索敵をしている隊長のレイモンド・ロイエンに尋ねた。
「ああ、そうだ。しかし、サラ・ニバルよ。丁寧な口調なのはいつもの事だが、敵にさん付けはどうにかならないものか?」
金髪青眼で、感情の起伏が穏やかな隊長も、この時ばかりは苦笑いをこぼしていた。
「どんなに悪さをする生き物でも、この世界の存在です。この世界に対する礼儀を忘れるな、と亡き母は常々言っていましたから」
母を失った事など微塵も感じさせないような満面の笑みを、黒髪茶眼の女性、サラ・ニバルは浮かべていた。
「そうか。さて、先行して探索しているロッシと合流するぞ。こっちだ」
レイモンドはロッシが付けたと思われる、木に点々とある、矢印状の傷を追っていった。
サラもそれに遅れないよう、少し駆けるようにして後に付いていった。
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