ある魔法使いのお話 ~第一章~

2/11
前へ
/11ページ
次へ
「う…うぅ……。」 砂浜に一人の男が横たわっていた。 歳はおそらく20代半ば頃だろうか。 無精ひげがちらほらと生えているが、銀色の少し長めの髪が日光に照らされて綺麗に輝いている。 上半身は砂浜に打ち上げられているが、下半身は海に浸かったまま。 纏っている長いローブが、波にゆらゆらと揺れている。 男は全身びしょ濡れだった。 表情を歪めながら、時折苦しそうに呻く。 そこへ少女が一人やって来た。 海岸に咲く小さなピンク色の花を摘んでは眺め、嬉しそうに歩いている。 「…あれ?」 少女の目が、倒れている男を見つけた。 「…!大丈夫ですか!?」 少女はそれが人だとわかると、急いで駆け寄り、肩を叩きながら何度も声をかけた。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加