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テレビは、紛争地帯で有名だった国を映し出している。
しかし、前に見たときは爆撃やら何やらの煙が立ち込めていたのに、今はない。
金髪碧眼のシャープな顔立ちのアナウンサーが、困惑した表情で言った。
『本日未明、世界中の銃器、弾薬、戦車など、ありとあらゆる武器が忽然と姿を消しました。ここでは、この数年間続く紛争により爆撃が絶えませんでした。しかし今、しばらくぶりの静けさが訪れています。現在、この不思議な現象の原因を究明しています』
「やったー!!」
私は嬉しさに飛び上がった。
私の狙いはこれだ。
武器が無ければ戦争ができない。
戦争が出来ないなら、国同士は話し合うしかない。
話し合えば、分かり合える。
そうして、徐々に世界平和は成り立たっていくのだ。
そして私は、影でそのお手伝いをしたことになる。
もしかしたら、分かり合えない国もあるかもしれない。
しかし、それによって市民が犠牲になることは決してない。
これで私の夢が叶う!
私の気持ちが踊り出さんばかりに高ぶった、その時だった。
テレビがまた新しい情報を映し出した。
異国の不毛の地から一転、今度はこの国のどこかの路地だ。
よく見ると、真っ赤に染まった人が数人倒れている。こんなの映していいのかな。
私が思ったのは怪我人への心配ではなく、まず、それだった。
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