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手の中の包丁が跡形もなく姿を消したため、私の手だけが柄の形を作った。
先程のニュースを伺うと、警察は相手に武器が無い今のうちに、と、大人数で素手で突入していったらしい。
リポーターはその騒がしい様子を興奮しながら実況していた。
『現在、警察は店の中の……あ!出てきました! あれです。2人に抱えられ手錠をしている真ん中の人物が今回の事件の……』
カメラを拡大にしたのだろう。やや荒れてはいるが、男の顔が見える。
顔が、腫れていた
きっと大勢の警察たちに殴られたのだろう。もう原型をとどめていないに等しい。
そして、私は気づいた。
『手』は、武器になる。
私は『手』が好きだった。
誰かと握手し、誰かを抱き締め、誰かに差し出す。
『手』は、素敵なものだ、と。
だが、違う。
手は、誰かを抱き締められるが、誰かを殴ることも出来る。
「……手も、武器なのね」
その時だ。
見ていたテレビの画像が斜めに傾いた。続いて、ゴトン、と重い音。画面が静止したとき、建築物はテレビの中で横向きに建っており、アスファルトは右側にあった。
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