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宮原さんには、早めに連絡をした方がいい気がして、みんなができあがった頃私は携帯電話を片手に店の外へでた。
番号を入れた後、通話ボタンを押す。
緊張で手がふるえる。
数回のコールがあり、宮原さんの声がした。
「はい」
短いけれど、低くて心地良い響きに一瞬だけど聞き惚れて私は言葉を失う。
「…もしかして里奈ちゃん?」
少し高くなったその声に、私の決心が折れそうになった。
「はい、里奈です…今大丈夫ですか?」
宮原さんの周りはざわついているようで、時折笑い声が聞こえた。
「大丈夫、学生時代の後輩と飯食ってただけだよ」
優しい言葉に、私はさらに緊張してしまう。
「実は、明日なんですが…」
言いにくそうに切り出すと、言葉を待たずに宮原さんは言った。
「あぁ、気にしないで用事があるならいいよ」
相変わらず、あっさり引き下がる宮原さんに、私は思わず、やっぱり…と引きずられそうになる。
でも宮原さんの言葉はまだ続いた。
「ただ俺は里奈ちゃんに会いたいので待ってる。ちょっとでもこれそうなら来てくれたら嬉しいよ」
宮原さんの語尾に重なるように、先輩ーっと怒鳴るような声が聞こえた。
「今行くって!…悪いね、里奈ちゃん、要するに俺のことは気にしないでいいから、もし明日がだめでも俺はまた誘うし、じゃあまた」
少しだけ早口でそういって、宮原さんは電話を切った。
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