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「紀ちゃん」
私は鼻歌からいつの間にやら熱唱にかわっていた紀ちゃんに声をかけた。
紀ちゃんは、ぴたりと歌うのをやめてちらりと私に目をやった。
「あら、起きてたの?」
「…鎌倉って…遠いの?」
かれこれもう2時間は車を走らせている。
紀ちゃんがプレゼントしてくれたパールピンクのコンパクトカー。
「行楽日和で道が混んでるからねー早ければあと1時間くらいじゃない?帰りは里奈も運転してよね」
「そんなに遠いの!?てか、私会社辞めてから3回くらいしか運転したことないよ…!」
「大丈夫大丈夫、何とかなるって」
紀ちゃんは可笑しそうに笑ったけれど、私は時計に目をやった。
家を出たのは10時頃。
宮原さんとの約束を考えたら、1時に鎌倉についたとして、帰りも3時間かかるなら滞在時間は1時間程になってしまう。
お昼ご飯食べてさぁ帰りましょうだなんて言えるわけもない。
やっぱり早くはなしておけば良かったと思っていると、紀ちゃんがのんびり言った。
「こうなったら一泊していくのもありよね」
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