9818人が本棚に入れています
本棚に追加
「それは…!…それはちょっと…」
思わず大きな声になってしまって、慌てて言葉を濁す。
「あら、なんか困ることある?明日約束とか」
私は大きく息を吸って、6時に約束していることだけを告げた。
宮原さんの名前は出さずに。
少し、考えるような間があって、紀ちゃんはいつもより低い声で言った。
「男?」
私がうなずくと、紀ちゃんはふっと笑った。
「わかった、なるべく間に合うように帰りましょ。遅刻してもまたしときゃいいのよ。それくらいの男じゃないとうちの里奈は預けられないわ」
うちの里奈。
紀ちゃんの言葉に、胸がちくりと痛んだ。
だったらどうして紀ちゃん。
どうして独りぼっちになったとき、私に教えてくれなかったの?
最初のコメントを投稿しよう!