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それっきり、完全に紀ちゃんは口を開かなかった。 私は寝たふりを決め込んでいるうちに本当に寝てしまい、紀ちゃんに起こされたのは、6時を過ぎた頃だった。 「おろすから地下鉄で行きなさいこの渋滞じゃ何時になるかわかんないわよ」 「え…あ、ごめん!私寝てた」 「気にしないで、ほら涎ふいて降りる準備しな」 よ、涎! 慌てて口の周りを拭ったけれど、それらしきものはなく、紀ちゃんが笑った。 「嘘よ嘘、冗談」 そのまま車を止めてくれ、私がシートベルトをはずそうとタングプレートに手をかけたとき、紀ちゃんがその手を止めた。
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