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顔を上げると、見たことない紀ちゃんの瞳と目があった。 紀ちゃんじゃ、ない。 紀之の目だ。 「行かせないっていったらどうする?」 まっすぐ、瞳をそらすことなく、紀之はそう言った。 「紀……ちゃん…?」 私がやっとのことでそれだけ言うと、紀之ははっとしたように私から手を離した。 「なーんてね、楽しんできて。そのうち紹介しなさいよ」 そう笑った顔はもう紀之ではなかった。 いつもの紀ちゃん。
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