9818人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
それでも、メールだけは2ヶ月に1度来るかこないか、私から送るか送らないかくらいのペースで続いていた。
他愛もないメールだったり、愚痴だったり、誕生日を祝うメールだったり。
紀之には何でも話して来たれど、ひとつだけ話していないことがあった。
インテリアの会社を辞めてしまったこと。
インテリアデザインの専門学校を卒業してコーディネーターとして入ったその会社で、それこそ死に物狂いで寝る間も惜しんで働いた。
小さな会社だったけれど、買い付けから独自ブランドまで取り扱っていて、まだ若かった私は、買い付けも、デザイン案もコーディネートも、出来ることはすべて自分でやった。
評価されたのは1期下の後輩だった。
わかってた。
自分の才能なんて。
それでも、死に物狂いで働いて、いつか報われるって信じていた私にはもう暗闇しか残らなかった。
夢はあっけなく散ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!