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ふっと、優しく笑って紀ちゃんは言った。 「当たり前でしょ」 いつもの、紀ちゃん。 あの日、ドライブの帰りに紀ちゃんがした意地悪は悪戯。 ただの悪戯。 あの後のデート以来もともと常連だったといえど、さらに足繁くお店に通うようになった宮原さんのお目当てが私だって言うことに、周りはすぐに気づいてしまった。 カズ君は下手くそと、なんだか寂しそうに笑った。 紀ちゃんは、早く言いなさいよと本気ですねた後、まぁ宮原さんなら合格かなと笑ってくれた。 だから、あの日、ドライブの時の紀ちゃんの言葉はただの意地悪な悪戯。 そう片付いてほっとしていたら、あっと言う間に春が終わった。
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