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外は雨。 ここ数日の悪天候で、客足もなく、いつもより少し早めに店を閉めた。 私は紀ちゃんが注いでくれた焼酎を口に含んだ。 むせかえるほど濃厚な芋の香り。 香りだけで酔っぱらってしまいそうな独特の香りをまとっていて、正直私は少し苦手だった。 「ロックじゃきついかしら、割る?」 紀ちゃんが察してくれて、立ち上がる。 閉店後の2人だけの時間。 よく残っていたカズ君もユウキ君が帰ってきてからは、つきあいが悪くなっていた。 「ううん、このままで飲みたい」 そう?と、紀ちゃんは再びカウンターに座った。 今なら、聞けるんじゃないかと、何度も思ったことがある。 紀子ちゃんのこと。
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