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私が何か言う前に。
紀ちゃんがそう言って、グラスの焼酎を飲み干した。
「紀子…ちゃん…?」
知っていたのに、動揺で手がふるえた。
こんなにあっさり、紀ちゃんの口から聞くなんて思わなかったから。
「…店の誰かに聞いたかもしれないけどね、紀子…死んじゃったんだ」
私の目から涙が溢れる。
こんなに泣き虫だったかと驚くほど、ここにきてから泣くことが増えた。
「黙ってて、ごめんなさい」
静かに、紀ちゃんは言った。
「本当に、アタシは昔から里奈を泣かせてばかりね」
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