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「ひ、久しぶり!元気だった?」
声が震えるのが、自分でもわかった。
「元気だよ、里奈こそ元気?電話なんて珍しいじゃない」
紀之の変わらない柔らかな、言葉。
安心する。
「実はね、失恋しちゃったんだ…紀之…会えないかな?会って話したいことたくさんあるよ」
声をうわずらせながら、涙が出そうになるのを必死で我慢して、最後の方は正直鼻声で聞こえないくらいだったけれど、私は紀之に会いたいと伝えた。
「電話じゃ…話せないの?」
意外な答えに、戸惑った。
「いや、だから…出来れば紀之にも会いたいし…」
つっかえながら、そう言った私に、紀之は冷たく言い放った。
「悪いけど、もう里奈とは会えない」
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