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「あら、お帰りなさい。相変わらず早いのね~健全なのは良いことですけど」 パックをして真っ白な顔のままソファーに座る紀ちゃんが、帰宅した私に呑気に軽口をたたく。 大丈夫。 泣かない。 「うん、健全なの」 私はそういって笑ったのに 「なんかあった?」 どうして 「…どうして?」 どうしてかな 「アンタ、泣きそうな顔してるじゃない」 どうして 紀ちゃんにはわかってしまうんだろう。 「うそ、そんなこと…」 「泣いていいわよ、泣けばいいじゃない」 紀ちゃんはパックをはずしてゴミ箱に捨てると、その場で振り返って両手を広げた。 「アタシの胸ならいつでもかすし、やけ酒にもつきあいますよ」 紀ちゃんの胸の中で、思いっきり泣いた。
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