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「ありがとう、どうしてもはずせない用事があってね。急いでたから後で連絡しようと思ったら携帯わすれるんだもの」 紀ちゃんの鞄はカウンターの上に置いてあった。 私が来る前に気がついてとりに行ったのかな。 それとも、彼女が届けにきた。 もやもやが広がっていく。 「なんか食べたいものある?」 「うん…さっぱり系が良いな…」 紀ちゃんに携帯を手渡しながら、私は続けた。 「西山さんって人から電話きてたよ、紀ちゃんからだとおもって出ちゃった」 私は精一杯何でもない風を装ったのに。 紀ちゃんの表情が一瞬固まった。 気づかないわけがなかった。 「…なんて?」 「鞄…忘れてるって…」 「鞄…あぁ…やだ、サブバックね…気づかなかった。用事があって出たときに忘れたのね」 紀ちゃんはなんだか諦めたみたいに力なく笑った。
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