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そういえば、私は紀子ちゃんの最後を知らない。 合わせた手をおろして、私は隣でまだ目をつぶって手を合わせたままの紀ちゃんの横顔を見つめながら思った。 定休日の日曜日。 紀ちゃんが誕生日に買ってくれたパールピンクのコンパクトカーを運転して、私は再び、鎌倉に来ていた。 紀ちゃんの家族のお墓参りをしに。 大切な人を失うって言う経験は、したことがなかった。 生まれたときにはおじいちゃんは亡くなっていたけど、おばあちゃんはまだぴんぴんしているし、お父さんもお母さんも妹も田舎に帰れば元気にしている。 想像しただけで悲しくなるのに。 紀ちゃんは、全てを失ってしまったんだ。
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