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何もしたくないのに、バイトに向かって、笑いたくもないのに笑顔で接客をして、食欲もないのに甘ったるいチョコレートをただひたすら売った。
紀之に電話してから、2週間、その生活を繰り返した。
会えないけど、メールも電話も待ってるから、辛かったらいつでもかけていいと紀之は言ってくれた。
彼女ができたのかもしれない。
そう言い聞かせても、ぽっかりあいた胸の穴は、正直失恋よりも大きい気がした。
「里奈さん…里奈さん!」
自分の名前が呼ばれていることに気がついて、慌てて横を見ると、碧ちゃんが、心配そうにのぞき込んでいた。
「大丈夫ですか?」
碧ちゃんは、22歳の大学生で、卒業旅行の資金稼ぎにこのアルバイトをしている4年生だ。
「顔色悪いですよ」
碧ちゃんの言葉に、大丈夫と首を振ったが、正直なところここ2週間、まともな睡眠をとっていなかった。
やっと眠れてもすぐに目覚ましに叩き起こされ、食欲もわかないから、チョコレートを主食にしていたくらいだ。
オールが出来なくなったとか、お肌や化粧のノリを気にしていた割に、自分の体力に驚いた。
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