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この間よりももっとずっと前。
どこかで…会ったことでもあったっけ…?
私は注文されたチョコレートを取り出して袋に詰めながら考える。
「2000円のお買い上げです。ありがとうございます」
碧ちゃんが、笑顔でお会計にまわってくれた。
こんな美人1度会ったら忘れないと思い、財布を開いてうつむいたままの彼女を再び凝視していると、なんとなく、本当になんとなく、私はその名前を口に出していた。
「紀之…?」
びくんと、彼女の肩が揺れるのがわかった。
恐る恐る、顔を上げた彼女の顔は、確かに紀之の面影が残っていて、今まで気づかなかったのが不思議なくらいだった。
「久しぶり」
困ったように笑いながら、彼女は否定せずにつぶやいた。
その笑顔もやっぱり美しくて眩しかった。
碧ちゃんだけが、ひどく驚いていた。
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