9818人が本棚に入れています
本棚に追加
店員さんが店の奥に見えなくなってから、私はケーキを嬉しそうに頬張るカズ君に尋ねた。
「カズ君もパティシエだったりするの?」
「そうだったり…は、しないかな、ケーキ食べないの?美味しいよ」
カズ君はフォークで、私の目の前にあるケーキを指した。
私は、なんだかどっと疲れてしまっていて、それ以上何も聞かずに、フォークを握った。
「いただきます」
ひとくち、口に入れてみると、ケーキの甘みと、なんだか懐かしい香りが口の中に広がった。
なんだろう。
すごく、よく知っている香り。
優しくて、安心できて、繊細な香り。
そうだ。
これは
紀ちゃんの香りだ。
最初のコメントを投稿しよう!