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店員さんが店の奥に見えなくなってから、私はケーキを嬉しそうに頬張るカズ君に尋ねた。 「カズ君もパティシエだったりするの?」 「そうだったり…は、しないかな、ケーキ食べないの?美味しいよ」 カズ君はフォークで、私の目の前にあるケーキを指した。 私は、なんだかどっと疲れてしまっていて、それ以上何も聞かずに、フォークを握った。 「いただきます」 ひとくち、口に入れてみると、ケーキの甘みと、なんだか懐かしい香りが口の中に広がった。 なんだろう。 すごく、よく知っている香り。 優しくて、安心できて、繊細な香り。 そうだ。 これは 紀ちゃんの香りだ。
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