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休憩時間になった瞬間、私はエプロンを投げるように脱ぎ捨て、最上階のレストランフロアへ向かった。
オープンなカフェで、とびきり目を引く綺麗な女性を見つける。
私は紀之、と言いかけて口を閉じた。
こんな美人にこんな名前を呼びかけたら、周りの人が驚くに決まっているし、第一紀之が気まずい思いをしてしまう。
少しだけ考えた後、私は呼びかけた。
「紀ちゃん」
紀之は手に持っていたカップを置くと顔を上げて、照れくさそうに笑った。
変わらない、7年前のままの笑顔。
どうしてはじめてみたときに気付かなかったのか不思議なくらいだった。
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