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長い、とても長い沈黙の後、紀ちゃんは大きく息を吸って顔を上げた。 「無理よ」 紀ちゃんは泣いていた。 「なんで六年前、アタシが里奈とあんなにあっさり別れたか分かる?」 「え…?」 「里奈を、失うのが怖かった。本当は、閉じ込めて、誰にもさわらせたくないし見られたくもないくらい、里奈が好きで好きで、でも、このままじゃ嫌われてしまうから…嫌われたくない一心で、友達のままそばにいる道を選んだの」 言葉が出なかった。 「紀子の事もあったし、里奈を傷つけてしまいそうで遠ざけてたら彼氏ができちゃって、彼氏の話なんかうれしそうにされた日にはアタシ死んでしまうと思って、連絡を絶ったのよ」 優しくて、穏やかで、いつも笑っていた紀之。 「だから、里奈と家族になるなんて無理よ。今も、アタシの気持ちはあの頃のままだから、里奈に恋して、愛して、浮かれきったままなの」 いつものように、優しく笑って紀ちゃんは、涙を拭った。
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