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「これで勘弁してあげるわ」
私が、倒れた宮原さんの横にしゃがみこんだ瞬間、紀ちゃんは、不服そうに言った。
「今のは里奈の分」
そして、紀ちゃんもしゃがみこむと、優しく、宮原さんの頬をつねった。
「これはアタシの分」
「く、クリリンの分は…?」
場違いな私の言葉に、紀ちゃんは呆れたように笑った。
「ある訳ないでしょ」
宮原さんは、しばらく呆然とした後、差し出された紀ちゃんの手を取って立ち上がった。
2人はそのままカウンターへと向かう。
「クリスマスだし、シャンパンを入れようか」
「しまった…ドンペリがきれてたわ里奈にお遣い頼もうかしら」
意地悪く、紀ちゃんはカウンターに座った宮原さんに舌を出した。
困った顔をしつつ、宮原さんは文句を言わない。
「…ヴーヴ・クリコは?」
「やっぱり宮原さんとは、好みが一緒みたいね」
紀ちゃんが、いつものように笑った。
いつの間にか、私が大好きな、2人の空気に戻っていて、ただ、2人を包んでいた悲しみが消えたせいで、その空気がよりいっそう、素敵に思えた。
もう
大丈夫。
私は、笑顔でカウンターに戻った。
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