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「綺麗…」 注がれたシャンパンに、思わず見とれてしまった。 「ロゼは飲んだこと無かったわよね里奈の誕生日にあけたのはイエローだったっけ」 「げ、あれヴーヴ・クリコだったんだ」 カズ君が味わえば良かったと呟くと、紀ちゃんは、一口のんで違いがわからん奴はなに飲んでも一緒よと笑って、私の前にもグラスを置いて注いでくれた。 「私が一番好きなシャンパンよ世界的に愛されてる未亡人」 「未亡人?」 「このシャンパンをつくったクリコ婦人はね、28歳の若さで夫を亡くして、その後は亡き夫の意志を継いでシャンパンを作り続けたの。それが、今じゃ4秒に1本開けられてるって言われるくらい愛されるクリコ社のシャンパンになったのよ」 紀ちゃんが、お酒のウンチクを語るのは珍しかった。 私は、その話を聞いたとき、なんだか紀ちゃんみたいだと思った。 でも、紀ちゃんはシャンパンのように誰からも愛されるって感じじゃない…もっとこう…癖のある…。 「未亡人の一途さはママに通じるけど、ママはスコッチって感じだよね」 宮原さんがそう言って、シャンパンを一気に飲み干した。
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