9818人が本棚に入れています
本棚に追加
「助かるよ!早速明日からお願いできる?」
「あ、明日!?」
思わず叫んで紀ちゃんを見ると、紀ちゃんも驚いた顔をしていたけれど、だんだん顔を歪ませ、堪えきれずに吹き出した。
ひとしきり笑って、紀ちゃんは笑いすぎで浮かんだ涙を拭って言った。
「いいわよ、里奈いってあげなさいよ」
こんなに笑う紀ちゃんを見たのは久々で、私は紀ちゃんの笑顔に頷いた。
何故笑われたのか腑に落ちないらしく、不服そうな顔をした後、ちょっと恥ずかしそうにはにかんだ宮原さんは私に向き直ると
「じゃあ今日はお店もあるし、明日はお昼ぐらいにしとこうか…そうだな、1時に事務所で」
宮原さんが、ゆっくり、私の前に手をさしのべた。
初めてあったときに、そうしたみたいに。
私もゆっくり、その手を握る。
「よろしくお願いします」
この時、また私は気づきそびれてしまった。
紀ちゃんがやっぱり、人のことばかり考えていたことに。
最初のコメントを投稿しよう!