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「一杯だけ良いかしら」 宮原さんを見送った後、紀ちゃんはそう言って、カウンターの中に入った。 私は頷くとカウンターに腰掛ける。 「なにが飲みたい?」 「紀ちゃんが飲みたいやつ」 ふふっと嬉しそうに紀ちゃんは笑って、見たことない湯呑みのようなグラスをカウンターに置いた。 「…お茶?」 そう言ったのは、紀ちゃんが急須を火にかけ始めたから。 「惜しい!…訳でもないか…黒チョカって言うのよ日本酒に徳利とお猪口があるように、焼酎にも専用のものがあるの」 芋焼酎の芋の匂いが、カウンターに立ち込める。 苦手だったツンと鼻にくる感じかなくて、香ばしくてとても甘い匂い。 「いい香り」 「やっぱり芋はこうじゃないと。黒チョカで飲ませてあげたくて探し回ったのよー」 さらっとそう言って、紀ちゃんは湯呑みのようなグラスに湯気が立ち上る焼酎をゆっくりと注いでくれた。 「はい、クリスマスプレゼント」
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