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二次会は、居酒屋から少し離れたお洒落なBARで飲み、終電に余裕で間に合う時間に解散した。 送るよと言ってくれた宮原さんの言葉を丁寧に断って、私は駅に向かいながら、携帯電話を取り出す。 「あ、紀ちゃん?今から帰るんだけどお店よっていいかな?…うん、1人。大丈夫、もう駅だし」 電話越しに聞こえる紀ちゃんの声が、なんだかひどく懐かしく思え、同時に緊張の糸が切れたみたいに、安堵と疲労が押し寄せてきた。 紀ちゃんなしで生きられないのは私かもしれない。 明日のお昼休み役所に行こう。 婚姻届を貰いに。 電車のシートの隅にもたれるように座り、微睡みに落ちていくなか、たぶん酔っているせいだけど、私はそんな事を考えていた。
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