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BARチョコレートの扉を開くと、見慣れない姿があった。 カウンターに腰掛ける一人の女性。 でも、見覚えはあった。 すらりと長い手足と、長く手入れの行き届いた綺麗な髪を耳にかけて振り返ったのは、数時間前に居酒屋のトイレでぶつかった彼女だったから。 ああ、やっぱり偶然って続くものなんだ。 紀ちゃんが、紹介するわと手招きをしてくれたけれど、何故か私は紹介なんてされたくなかった。 彼女もユウキ君と同じなんだろうと、感じたから。 紀ちゃんの事が、好きなんだ。 にっこり笑って、会釈した彼女の視線は、笑っているのに、突き刺すように、私をとらえて離さない。
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