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紀之と、一緒に暮らす。
なんて素敵な響き何だろう。
紀之の練り香水のにおいに包まれて起きる朝ときたら、想像するだけでも幸せだった。
「でも…私お金が…」
「引っ越しなら、アタシの車を使えばいいし、家賃はかからないわよ、マンション買っちゃったから。3LDK一人で暮らすには広すぎるから、犬でも飼おうかと思ってたんだ」
「犬の…かわり…?」
はらはらとまだ止まらない涙を、鼻水を拭ったハンカチで拭ってくれ、紀之は頷いた。
「とりあえず、トイレの躾はいらないじゃない」
もう、なんでも良いような気持ちと、紀之の香りに包まれて、ぼーっとした頭のまま、私も大きく頷いた。
紀之との共同生活の始まりだった。
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