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走っても走っても、距離は縮まるどころか延びていく。 私が紀ちゃんを求めるほど、紀ちゃんは私から離れていく。 こんなに簡単に挫けるなんて 気合いが足りない、愛が足りない、根性がない。 愛って…何。 気合い? 根性? 忍耐? もう、何だかよくわからなくなってしまった。 「紀ちゃん…結婚しようよぉ…」 もう、どうすることもできなくて 捻り出すように、私は呟いた。 「結婚して…子供作って…幼稚園のお迎えは当番制にして…日曜日は、お弁当作って鎌倉に行って…三人で川の字に寝て…」 私が、言葉に詰まると、ふーっと溜息のように紀ちゃんがタバコの煙を吐き出して、聞いたこともない低い声で呟いた。 「それが、里奈の幸せ?」 低くて、冷たい、ぞっとするような声だった。
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