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予想外の、紀ちゃんの反応に、私は顔を上げることができなかった。 「…そういう幸せは…アタシきっと里奈にあげられないわ」 そう言った紀ちゃんの声は、いつもと同じで、私は慌てて顔を上げた。 悲しそうな、紀ちゃんの瞳と、視線がぶつかる。 言葉をつなげたくても、何も出てこない。 「男と女の愛の違いってなんだと思う?」 唐突に、紀ちゃんが問いかけた。 余りにも唐突で、動揺しつつも私は答える。 「…男の人は…一度に沢山の人を愛せるとか?」 「そういうのは浮気と一緒で個体差があるでしょ。正解は、母性愛」 「母性愛…?」 「そう、女にあって、男に無い」 「無いとは…言い切れないんじゃ…」 「確かに、言い切れないかもしれない。でもね、母親になれるのは、女だけなのよ。どんなに頑張っても、男が子供を産めることはない。子供に与える愛に、見返りなんて求めないでしょ?それが母性愛。女は与える愛を本能的に知ってるのよね」 まるで頓知だ。 紀ちゃんの言いたいことが全くわからない。 「アタシ、そういう人間になりたいの」
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