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私は、女だけど、紀之に愛されたいって思った。
見返りを、求めた。
結婚だって、子供だって、本当は、口実でしかなかったかもしれないのに。
一番、信じていなかったのは…私だったんだ。
「純ちゃん…見返りを求めない愛って、すごいよね」
一瞬、きょとんとした顔をした後、純ちゃんは笑った。
「そんなの愛じゃないわよ」
「え…だって…母親は子供に無償の愛を注ぐじゃない」
「バカね、ママだって愛されたいから愛を注ぐのよ」
固まっている私に、純ちゃんはタオルを差し出しながら言った。
「その様子じゃ、紀之と相当下らない喧嘩したみたいね。心配して損したかしら?さっさと顔洗って、寝な。布団は敷いてあるからね」
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