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お店の看板を確認してから、私はゆっくりと扉を開いた。 今日は、事務所も休みだったので、純ちゃんちでだらだらした後、実家に帰る純ちゃんを駅まで見送ったが、特にする事もなく、直接ここに来てしまった。 西山さんとの約束までにはまだかなり時間があったのに、静かな落ち着いた店内を見渡すと、彼女の姿があった。 驚きつつも、たまたま振り返った彼女と視線がぶつかり、私は慌てて会釈をした。 「お待ち合わせでしょうか?」 視線に気がついた店員さんの言葉に頷くと、西山さんのいる席まで案内された。 「早めにきて良かったです…」 微笑んだ西山さんは、緊張しつつも、どこか安心したようだった。 初めて会ったときのように、観察するような視線は今日はなかった。 席に着くなり、西山さんは本題を切り出す。 「今日お誘いしたのは、紀之を私に任せていただきたいと思って…きちんとお話したかったんです」 分かってはいても、ストレートな切り出し方に、私は面食らって言葉が出なかった。
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