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私の気持ちを見透かしたように、西山さんはゆっくりと話し始めた。 「昔から、優しくて、頭も良くて、モテモテでしたよ。でも、体が弱い妹の話ばかりしてて…シスコンってのでも有名でした」 ちょっとおどけたような口振りに、私も思わず笑顔になる。 でも、一点の曇りもなく、笑って紀子ちゃんの話をする紀之の姿を、私は想像することすら出来ない。 私の緊張が、少しゆるんだことに気がついたのか、西山さんはメニューを差し出してくれた。 「お腹、すいてません?ここのご飯美味しいんですよ、お酒飲めますよね?」 そう言って、店員を呼び止めると、ビールを2つグラスでと注文をした。 あぁ、なんだか、ずいぶん前にもこんな事があった。 あれは、ユウキ君と、話をしたときだ。 あの後、ユウキ君とはまともにはなす機会がなかったけれど、ダブルベットを買った話しを、カズ君にしたとき、カズ君がユウキに教えてやろうと嬉しそうに言っていた。
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