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「3年の夏休みに親代わりだった祖父母も亡くなって…紀之は笑わなくなりました」 ずきんと、心臓が、音を立てた。 「笑わなくなって、葬儀が終わっても学校も休みがちで…第一希望の医学部が、就職に変わって…」 西山さんの声が、少しだけ、小さくなった。 「私…何も出来なかった…結局、紀子ちゃんの病気が悪化して、就職よりも時間の融通が利くアルバイトで様子を見るって言ったまま卒業しました。 でも、紀之が好きで…連絡だけは取り続けてて…バイト先に、彼女ができたって言われたときは驚きました紀子ちゃんの事があるから、彼女は作らないんだと思ってたんで…」 私はあの時、何も知らずに、優しい紀之に惹かれて…両親が亡くなってるって知ったときも、妹の面倒見てるって知ったときも、脳天気に、紀之君は凄いねって言ってた気がする。 紀之は一体、こんな無神経なバカな私のどこを好きだと思ってくれたんだろう。
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