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「紀之が里奈さんと付き合いはじめてから、紀之と偶然、町でばったり会いました。 両親が亡くなってから、あんなに優しく笑う紀之見たこと無かったから…悔しいけど、里奈さんになら紀之を任せられるなって思ったんです。 だから、連絡をとるのも辞めて、勉強に没頭しました。 紀之の分まで良い医者になろうって…紀子ちゃんが研修先の病院に入院するまでは…」 紀子ちゃんが西山さんの病院に入院した時には、私達はもう別れていた。 本当に、私が知ってる紀之の顔なんて、1年にも満たない…自分が…急に情けなくなってきた。 「見舞いに来た紀之は、まるで別人でした。あんな紀之を、見たこと無かった。…あんな…冷たい顔で笑う…紀之を…」 思い出して、身震いする自分を押さえつけているかのように、西山さんは、体を固くしていた。 途切れ途切れになりながら、でも、西山さんは必死に話し続ける。 「…私…あの笑顔…全部…紀子ちゃんのせいだと…勝手に…思っ…て…」
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