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そして、私はその真っ直ぐな瞳に貫かれて、思い出した。 紀之が好きだった事。 確かに紀之が好きだった。 でもそれは、付き合っていた、当時の紀之だって言うことに、気がついてしまった。 今、私が必死で守ろうとしてるのは、過去に手放してしまった紀之に対するただの未練だ。 だから、紀ちゃんの手術がショックだった。 私を愛してくれた優しい紀之を求めて 私は、無意識に紀ちゃんの中の紀之ばかり、探していたんだ。 紀ちゃんに、過去に捕らわれていると非難しといて 過去に、縛られていたのは私。 どん底からすくい上げてくれた紀ちゃんを、過去に愛した紀之に重ね、よけい紀ちゃんを苦しめた。 とっくに終わった恋に、すがりついていた惨めな私。 恋だ愛だ家族だ、都合よく解釈して、紀ちゃんをいや、紀之独占しようとしてただけなんだ。 でも、西山さんは昔も今も、全部ひっくるめて紀之の事を愛してる。 私は彼女のように、胸を張って、彼を好きだとは言えない。
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