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「里奈、荷物これで全部?」
「うん、紀ちゃ…紀之は荷物それだけで良いの?」
「一泊だし、温泉だし、着替えがあれば充分だろ」
紺のニットセーターにジーンズ。
シンプルだけど、紀之にはよく似合う。
長い髪を、バッサリ切ってしまったことには本当に驚いたけど、むしろ中性的な色っぽさみたいなものがあって、どきどきする。
切ったといっても、顎でそろえられた長めのボブで、束ねようと思えばなんとかなるくらいの長さだった。
その髪を無理やり束ね、ジーンズ姿の紀之は、どこからどうみても男性だった。
そう、今となりにいるのは
篠田紀之。
私が、大好きだった人。
今日から一泊二日の温泉旅行。
「じゃあ出発しますか」
のんびりとした紀之の言葉に、私は笑顔で頷いた。
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