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離れていすぎた。
紀ちゃんはそう言ったけれど、いざ暮らし初めても違和感なんてみじんもなかった。
7年前、私を抱きしめてくれた紀之と別人な訳でもなく、全く同じと言うわけでもない。
絶妙な距離感がたまらなく心地よくて、そのあまりのしっくりっぷりに、実は本当の姉弟なんじゃないかと思ってしまったほどだった。
「あんたみたいな妹ごめんだわ」
出勤の準備を始めた紀ちゃんが、ドレッサーの前で口紅を塗りながら笑った。
「えっ私が妹なの?いやだよ」
求人雑誌を片手に、すっぴんのままの私はソファーから身を乗り出すように振り向いた。
「仕事一つ決められない女が文句言わないでよ」
「関係ないじゃん!」
「それに、アタシの方が誕生日は先でーす」
おどけた紀ちゃんの顔はすっかり外行きのメイクで、口喧嘩の最中だというのに、私は見とれてしまった。
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