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「キッチンにカレーが有るから、夜はそれ食べてね」
紀ちゃんがそう言って口紅を化粧ポーチにしまった。
「今日も遅いの?」
当たり前なのに、聞かずにはいられない。
私は紀ちゃんの恋人ではないのに。
「日曜は休みだから、どこか行きましょ」
その一言で、元気になる私の単純さ。
と、同時に恋人でもないのに気を使わせたことに対する自己嫌悪。
「紀ちゃんは好きな人いないの?」
「いたら里奈に一緒に住もうだなんていわないわよ」
優しく笑うから、つけあがりそうになる。
恋人になりたい訳じゃない。
でも、紀ちゃんの一番が私だったらいいのにって言う気持ち。
なんて、よけいなことを考えないよう早く、仕事探して働こう。
私は大人しく求人雑誌に目を落とした。
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